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はじめに

登場人物および地名

序章 イリアステームの杖

(1)(2)

第一章 少年戦士

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(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

第二章 空中庭園

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(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

(16)(17)(18)      

第三章 邪悪なるもの

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

(16)                 

第四章 七惑星の巫女

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

(16)(17)(18)(19)

(20)(21)           

終章 記憶の底

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(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

おわりに

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小説「七惑星の記憶」

 

第四章 七惑星の巫女

 

(9)

 

 解毒剤の効果により、まもなくラフムの傷は癒えた。

 ラフムは立ち上がり、肩の様子を確かめるように素振りを繰り返している。

 ラハムはその様子を少し離れた場所からじっと見ていた。

ラフムは大丈夫だろうか。ラフムが死ぬかもしれない。

 この一年間、ずっとその事を考えてきた気がする。

 自分は、ラフムを護る。二人で生きてこそ、師匠ヌディンムトの意に沿った戦いができると信じていた。

 師匠の命令は絶対である。弟子は師匠に質問する事さえ許されていなかった。

 その代わり、この師弟関係には心のつながり、一体感があった。師匠の言葉は厳しいが、その根底には優しさを感じる。ラフムとラハムは師匠を尊敬していたし、師の示す方角は常に正しい道であると考える事が、二人の信念であった。

 旅に出てからもこの信念に揺るぎは無く、これまで師匠の指令に疑問を持つ事はなかった。

しかし、ラハムは思うのだ。ラフムは死を厭わない。でも、自分は生に執着がある。二人はこの旅で、違う心を身に付けてしまった。

旅に出る前と違い、この2年間で二人は少し大人になった。昔は師匠に話せなかったことでも、今は話せる気がした。

師匠は、何のために誰と戦っているのか。

 なぜ、二人を旅に出したのか。師匠は、グリヌフスにキシャルが、アリア-サンにエンリルが居る事を知っていたのか。

 なぜ、自分たちは同世代の少年とは違う、戦いを強いられているのか。そもそも、自分たちは何者か。

師匠は、自分たちに命を捨ててまでの戦いを望んでいるのか。

『でも・・・』

ラハムには、師匠の回答は予想できた。こう言うだろう。

『そんな事を知ってどうするのじゃ。知ったところで、何も変わらぬ。』

質問の答えがどのようなものだったとしても、絶対にラフムは師匠に従うだろう。そうなれば、ラハムはラフムを護るため、戦いに挑むしかない。

答えを知ったとて、ラハムの行動に変わりは無いのだ。

ラハムは絶望的な気分になった。

ラハムは自分の本心と向き合ってみた。結局のところ、『自分は死にたくない。ラフムとの生活を守りたい。』だけなのだ。それを隠していては、師は揺るがない。

しかし、その言葉は口に出来なかった。

それはラフムとの別れを意味しているからだ。

なぜなら、ラフムは死を覚悟して、戦いに挑もうとしているのだから・・・。

 

「ラハム!敵だ!」

 ラハムは我に返った。

 部屋の中央に光の柱が二本立つと、それぞれの柱の中から赤いローブを身にまとい、手に黒い金属のスタッフを持つダークストーカーが出現した。

 別の場所から瞬間移動してきたのだ。

 赤いダークストーカーは彼らの上位種族、魔法を使いこなす集団である。

 おそらく、前の戦いで逃げたダークストーカーがラハムたちの場所を知らせたのだろう。

 ダークストーカー達は、両手持ちのスタッフを構え、軋むような音を立てた。

 スタッフの先から火球が放たれる。

 ラハムは、床を転がるように火球を避けた。火球は壁に当たって炸裂し、焦げた匂いが迷宮に充満した。

 ラハムは転がりながら剣を抜き、ダークストーカーの一人に突進した。

 魔法を使う者は物理攻撃には弱い者が多い。ラハムは敵が次の呪文を唱える前に、間合いを詰める作戦に出た。ダークストーカーは先ほどと同じ軋む音を立てていたが、スタッフで応戦することも無く、棒立ちである。

ラハムは敵の胸部に細身の剣を突き立てた。

「アッ!」

 剣先が触れる寸前、敵の姿は消えたのだ。瞬間移動である。

「ラハム!後ろ!」ラフムの声がした。そのラフムも、赤いダークストーカーの心理攻撃を食らい、足の動きを止められている。

 ラハムは振り向いた。

 ダークストーカーのフードの奥に見える赤く光る目が笑っていた。

 すでにスタッフの先に火球が宿っている。

 この至近距離では、火球を避ける事はできない。ラハムは身を固くした。

 しかし、攻撃は来なかった。

 一呼吸後、ダークストーカーは苦悶の叫び声を発し、床に崩れ落ちた。

 ダークストーカーの向こうには、白髪の老騎士が立っていた。右手に長剣を持ち、左腕には円盾を装着していた。そして、全身はプレートメールに覆われている。

 この騎士が、敵を背後から一刀両断にしたのだ。

 残されたダークストーカーは、危機を察知し、瞬間移動を繰り返しながら部屋を巡回し始めた。騎士に的を絞らせないようにする作戦だろう。

 騎士は長剣を八双に構え、動きを止めた。

 それをチャンスとみたダークストーカーは騎士の背後に瞬間移動し、軋む声を発した。スタッフの先端に火球が宿る。

 火球は発砲されたが、騎士は身を屈めてそれを寸前でかわした。そして、振り向きざま、長剣の切っ先はダークストーカーの首を刎ねていた。

 あっという間に騎士はダークストーカーを片付けてしまった。ラハムは声も出なかった。

「出番が無かったなあ。」彼の後ろから女の声が聞こえた。

 ラハムが振り向くと、そこには彼と同じぐらいか、年下に思える少女が立っていた。

 革の防具と小型の剣を装備していたが、その小さな姿はとてもこの迷宮に似つかわしくない。

この少女はラハムに気配すら感じさせなかった。ただ者ではない事は分かる。

 だが、少なくとも敵ではないようだ。

「ラフムとラハムだな。待っておったぞ。」騎士の低く優しい声が迷宮に響いた。

「あなた方は?」ラハムが言った。

「私はシャマシュ。お前たちを迎えに来たのだ。」

「はじめまして。あたしの名はアルカリンクウェル。アルって呼んで。」

 シャマシュはラフムに近づくと手をかざし、短い呪文を唱えてラフムの金縛りを解いた。

「あ、ありがとうございます。あなたはなぜ私の名を・・・」

「話は後だ。お前たちの師匠が待っている。」

 

 

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