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はじめに

登場人物および地名

序章 イリアステームの杖

(1)(2)

第一章 少年戦士

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

第二章 空中庭園

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

(16)(17)(18)      

第三章 邪悪なるもの

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

(16)                 

第四章 七惑星の巫女

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

(16)(17)(18)(19)

(20)(21)           

終章 記憶の底

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

おわりに

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小説「七惑星の記憶」

 

第四章 七惑星の巫女

 

(17)

 

 ラフムとラハムが到着した時、そこは天井から壁、床に至るまで真っ黒に焼け焦げ、煙がくすぶっていた。また、ところどころに氷の破片が残っており、水が滴っている。

 床に開いた大きな裂け目は、固まった真っ黒な溶岩で塞がれていた。

「師匠!」

 ラハムは叫んだ。応答はない。いたるところの壁が崩れ、破壊されている為、迷宮の他の場所と違って、ここでは声に対する反響すら、ない。

「ラハム、これはきっと、師匠の水晶玉が暴発したか何かでこうなったんだよ」

「そんな事ってあるの?」

「分からない。でも、もし師匠が生き延びているとしたら、ここには居ないよ。上手く逃げた場合だけだろう。」

 ラハムは焼けた床の上にどす黒い痕を見つけた。

「血だよ!」滴る血が、点々と二人が入ってきた方向と逆の通路に続いていた。「師匠のかな?」

「・・・。」

 師匠のじゃなかったら誰のだ、とラフムは思った。

 そのとき、二人の背後の壁がガラガラと音を立てた。ラフムとラハムは本能的に振り向きざま、剣を構えた。

 焼け焦げた壁が崩れると、中から白い壁が見えた。

 白い壁は波打ちながら形を変えていき、壁から分離すると、人型になった。

「師匠のゴーレムだよ!」

 ヌディンムトが壁に同化させていたストーン・ゴーレムの一体は、生き残っていたのだ。

 ゴーレムは二人の前にひざまずくと、右腕を持ち上げ、ゆっくりと拳を開いた。

 そこには、赤と水色の雲がうごめく水晶玉があった。ヌディンムトが予備として残しておいた二つ目の切り札である。

 ラフムは、差し出されたその玉を受け取った。

「おまえ、師匠がどこへ行ったか知らないか?」

 ゴーレムは人差し指を立てた。

 が、その瞬間、ゴーレムの石の身体はバラバラになり、崩れ落ちた。

「役目を終えたんだ。」

 床に転がったゴーレムの人差し指は、血の滴りが続く通路の方向をしっかりと指し示していた。

「師匠は・・・生きてるんだね。」ラハムが今は石礫になったゴーレムに呟いた。

「ラハム。」

「何?」

 ラハムは、ラフムがいつになく険しい表情をしているのを見て、一瞬固まった。

「ここで別れよう。」

「い、嫌だよ。」

ラハムは、ついに来たかという感覚を味わっていた。

「よく聞いて、ラハム。師匠は大事な人だ。少なくとも生きてここから脱出したみたいだけど、怪我をして危険な状態かもしれない。すぐに助けに行かなければならないよね?」

「ああ、そうだ。」

「もう一つ、この作戦はこの水晶玉を魔人にぶつける事が出来るか否かで勝敗が決まる。一つ目は暴発した。二つ目はここにある。」

「分かってるよ。」

「もしかしたら、シャマシュ卿はまだ魔人と戦っているかもしれない。この作戦を成功させるためには、この玉を魔人の洞窟に運ぶ必要があるんだ。

 どちらもすぐに行動に移さなければならない問題だ。

 でも、僕たちは二人いるんだよ。僕は洞窟に向かう。ラハムは師匠を追ってくれ。それが一番いいんだ。」

 ラハムは、何のためにここまで来たのか、と考えていた。自分は、ラフムを守る為にここに来た。それなのに、一番大事な時に、離れてどうする、と。

「でもどうやって魔人にその玉をぶつけるのさ?」

「これさ。」ラフムはスリングに使う革と布を縫い合わせた帯を取り出した。「僕は自信があるよ。やってみせる。」

「分かった。」ラハムは心とは裏腹な言葉を口にした。「一つ約束して。」

「何?」

「死なないで欲しいんだ。」ラハムの声は震えていた。

「ラハム、僕は嘘をつけない。その約束はできないよ。」

「じゃ、じゃあ、一緒に居ようよ。二人でいた方が、どちらかが生き残れる確率が高いよ。」

「ラハム!しっかりしろ!」ラフムは水晶玉を懐にしまいこみながら言った。「そんなんじゃ、戦えないよ。僕だって、ラハムに生き残ってほしい。二人とも生きてたら、また一緒に・・・。」

 そこまで言って、ラフムは言葉を飲んだ。

 ラハムが背を向けたのだ。涙を堪えているのだろう。

「じゃ、行くよ。」ラフムが背中に声をかけた。

 ラハムは振り向き、両手を差し出した。ラフムも自然に手を出す。

 二人は、両手をしっかりと掴みあった。幼い頃から慣れ親しんだ兄弟の手。二人の想いは一致していた。

 もう言葉は無かった。手を放すと、ラフムはもと来た通路、ラハムは血が続く通路に走り出した。

 

 走り出したラハムの心は、晴れていた。

 自分が生き延びれば、ラフムも生き延びる。そう信じる事にしたのだ。

 すぐに通路は二手に分かれ、血の滴りは左に続いていた。

 ラハムは左の通路に入った。そのとき、右の通路の奥に光る何かを見た。

 ラハムは足を止め、振り向いた。何かが近づいてくる。

 間もなく右の通路から姿を現したのは、1頭のジャイアント・リザードだった。

 飼い主であるダークストーカーを失い、走り去ったはずだが、どこをどう通ってきたのか、また出くわしてしまったのだ。

 ジャイアント・リザードは、口から赤い舌をチロチロと出し、ラハムに向かってきた。

 ラハムの心の奥底に、何か怒りにも似た感情が湧いてきた。無言で細身の剣をリザードの口に突き刺した。その怒りが乗り移ったように、リザードはその剣に噛みつき、頭部を左右に振った。

 ラハムは振り飛ばされたが、回転しながら立ち上がり、リザードの左横に回り込んだ。

 リザードの巨体はその動きについていけず、ラハムの剣は横からリザードの頸部を貫いた。リザードは倒れ、苦しみ悶えたが、すぐに動かなくなった。

 ラハムはそれをじっと見つめ、立っていた。

「強くなったじゃないの、坊や。」

 突然声を掛けられ、はっとラハムが振り向くと、そこにはアリア-サンの賞金稼ぎ、フーレイがいた。その傍らには、見慣れぬ赤い鎧を着た戦士と白い神官着の女がいる。

「フーレイ!なんでここに!?」

 ラハムは驚きと安堵で胸が熱くなるのを感じた。

 

 

 

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