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はじめに

登場人物および地名

序章 イリアステームの杖

(1)(2)

第一章 少年戦士

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

第二章 空中庭園

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

(16)(17)(18)      

第三章 邪悪なるもの

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

(16)                 

第四章 七惑星の巫女

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

(16)(17)(18)(19)

(20)(21)           

終章 記憶の底

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

おわりに

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小説「七惑星の記憶」

 

第四章 七惑星の巫女

 

(14)

 

 ラフムとラハムは、ダークストーカーの群れに斬り込んだ。

 洞窟を守るダークストーカーは目視で確認できるだけで6人いた。皆、一様に赤いローブを身につけ、黒いスタッフを手に持っている。

彼らは驚いた様子もなく、弧を描くように分散した。

 ラフムとラハムは並走しながら、剣を上段に構え、あえてその中心に突入する。

 正面のダークストーカーのスタッフから閃光が放たれた。雷撃の魔法である。

 二人はそれを読んでいた。跳ねるように左右に分かれ、魔法の閃光は彼らの間を通過した。

 まるで鏡に映したかのようなその動きに、ダークストーカー達の判断が一瞬鈍る。

 この僅かな隙を突くのが二人の得意な攻撃だった。

 ラフムは左端の敵にそのまま突入し、剣を振り下ろした。

 ラハムは右端の敵に攻撃すると見せかけ、直前で方向を変えた。

 左端のダークストーカーはスタッフでラフムの剣を受け止め、押し返した。少し距離を取って、魔法を使う態勢を整えようというのだ。

ラハムはそのダークストーカーのすぐ横に来ていた。

ラハムの剣は敵の脇腹を切り裂いた。致命傷ではないが、そのまま走り過ぎる。

ラフムもすでに次の敵に突っ込んでいた。二人は一撃ずつを敵に浴びせ、止まることなく走り続けた。

二人の役目は囮である。敵を全滅させる必要は無い。まずは奇襲攻撃で混乱を狙う作戦なのだ。

騒ぎを聞きつけ、洞窟の奥からさらに2人のダークストーカーが現れた。彼らはそれぞれ、何やら巨大な生き物を引き連れていた。

暗闇でよく見えないが、二頭いるその生き物が同種のものである事はラハムにも分かった。

ラフムの方はというと、彼はダークストーカーの脇をすり抜け、剣からスリングに武器を持ち替えていた。スリングの標的はあの生き物のようだ。

あの怪物をスリング・ショットで倒せるとは思えないが、ラフムは囮としての仕事を全うしようとしているのだ。

「ウッ!」

 ラハムは背中に衝撃を受けた。いつの間にか4人のダークストーカーに囲まれ、背後からスタッフの攻撃を受けたのだ。さらに身体に痺れが走る。

「うおおお!」

 ラハムは気合で雷撃の魔法に耐えた。剣を派手に振り回し、なるべく敵の注意をラフムに向けないようにした。

ラフムのスリングは命中したようだ。怒った怪物が暗闇からのしのしと姿をあらわす。ちろちろと赤い舌が見え、緑色の鱗が確認できた。四本足で身体をくねられながら近づいてくる。身体の高さは人間の身長ほどあることが確認できた。

その生き物は、ジャイアント・リザードと呼ばれる爬虫類型の怪物だった。

 ラフムは腰に下げた革袋を一つ取ると、地面に叩きつけた。

 革袋は小さな爆発を起こし、もくもくと黒煙を吐き始めた。

 それが、逃走の合図だった。

 ラハムは敵の間をすり抜け、走り出す。ラフムもすぐに追いついた。後ろを振り返ると、5人のダークストーカーと1頭のジャイアント・リザードが煙を抜け、追ってくるのが見えた。

『囮としては上出来だ。』

 ラハムは思った。ラフムも同意見らしく、並走しながらラハムに親指を立てた。

『でも、逃げ切れる?』

 そう思った瞬間、ラハムの走る速度が急激に落ちた。先ほど受けた雷撃の影響で、足が痺れているのだ。

「ラハム! 急いで!」

 ラフムは後ろの敵をちらちら見ながらラハムに速度を合わせて走っている。

 思いとは裏腹に、ラハムは片膝をついた。

 ラフムは剣を抜き、ラハムを守るように敵の方向に仁王立ちした。

 そのとき、彼をダークストーカーが放った無数の火球が襲った。

 直撃は無かったが、その中の一つがラフムの足元で炸裂した。

「ラフム!」

 ラフムは吹き飛ばされ、通路を転がった。

「っくそう!」

 ラハムは痺れた足を拳で叩き、剣を抜いて立ち上がった。

 そのとき、敵に異変が起きた。

 ジャイアント・リザードが主人であるダークストーカーの一人に噛みついたのだ。

 頭部をくわえられ、振り回された挙げ句、迷宮の壁に叩きつけられ、そのダークストーカーは絶命した。

 ダークストーカーのリーダー格と思われる一人は異変を察知し、他の3人にジャイアント・リザードを攻撃するよう命じたようだ。

 3人のダークストーカーは、先ほどまで仲間だった暴れる怪物にスタッフを向けた。三本のスタッフの先端に閃光が宿り、リザードに向かう。

 と、そのとき、二度目の異変が起きた。

 放たれた閃光の一つが、リーダーのダークストーカーに向かったのだ。

 ダークストーカーのリーダーは不意を突かれて倒れ、ぴくりとも動かなくなった。

 ジャイアント・リザードは、至近距離で雷撃を食らい、その辺をぐるぐると回った挙げ句、そのままどこかに走り去った。

 残った3人のダークストーカーは混乱しているようだ。何やら言い争いをしている。

 そのとき、通路の向こうから小柄な人影が音もなく現れ、ダークストーカーの一人に背後から近づいた。

『あ、アルだ!』

 ラハムは理解した。リザードとダークストーカーの一人を狂わせたのは、アルカリンクウェルの心理攻撃の効果だったのだ。

 ラハムは走った。アルカリンクウェルはすでに一人仕留めていた。

 混乱が抜けない残り二人のダークストーカーを斃すのに、それほど時間はかからなかった。

 

「・・・アル、伝令は?」

 気を失って手当を受けていたラフムは、開口一番、作戦の心配をした。

「何言ってるの! あなたたち頑張り過ぎ!」

「いや、でも・・・」

 ラフムは気合で立ち上がろうとしたが、ふらついた。革の防具のところどころが焦げている。

「だいぶ洞窟から離れてしまったわ。あたしはシャマシュが洞窟に入れたか確認してから行くよ。」

「いや、こうなった以上、僕たちも」ラフムが言った。

「いいえ。足手まといよ。」アルカリンクウェルはきっぱりと言った。「きっと往復してもあたしは追いつくわ。」

確かに、ハーフエルフの素早さと暗闇での特殊視力は真似できない。

「あなたたぢは十分役目を果たした。無理せず、師匠のところに行って。次はあたしが自分の役目を果たす番。」

 アルカリンクウェルはウインクをすると、踵を返し、暗闇に消えていった。

 ラハムは、何か胸騒ぎがした。

 

 

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