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はじめに

登場人物および地名

序章 イリアステームの杖

(1)(2)

第一章 少年戦士

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

第二章 空中庭園

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

(16)(17)(18)      

第三章 邪悪なるもの

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

(16)                 

第四章 七惑星の巫女

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

(16)(17)(18)(19)

(20)(21)           

終章 記憶の底

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(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

おわりに

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小説「七惑星の記憶」

 

第二章 空中庭園

 

(18)

 

ネルガルは、ヌディンムトとシャマシュにこれまでの経緯を簡単に説明した。そして、エルフは友好的だが、あまり人間に興味は無く、こちらが問うた事には答えるが、向こうから積極的に話すことはしない、と付け加えた。

話し終えた後、残りの仕事は自分独りで行うつもりである事を告げた。

 ヌディンムトは引き止めなかった。この旅でネルガルの性格を十分に理解していたのだ。

 その後でネルガルは、アルと二人だけで話がしたい、と言った。

 ヌディンムトとシャマシュはそれを受け入れ、少し離れた巨木の下で待つ事にした。

 

「本当に行っちゃうの?」アルは悲しそうに視線を投げかけた。

「ああ。お前にとって必要なのはおれじゃない。あの二人を“空中庭園”に連れて行き、ウィルラスに会わせてやってくれ。そうすれば必ず協力が得られる。」

ネルガルは視線をアルから逸らした。

彼は口ではそう言ったが、“空中庭園”でアルの運命と強い意志を知ったとき、自らの手でアルを運命から解放してやりたい、という気持ちも持っていた。

ただ、ネルガルには賞金稼ぎとしての仕事に強いこだわりがあった。

ヌディンムトとマルドックは、かつての仲間である。かつての仲間の子を助けるのに何の躊躇も無い筈だ。ヌディンムトの知識・知恵を用いれば、何らかの解決方法が見出せるかもしれない。

それに対して、ネルガルとマルドックの関係は、賞金稼ぎと賞金首。

ヌディンムトの旅の目的はマルドックの討伐ではなく、“奈落の門”と呼ばれるテームの謎を解き、出現を阻止する事だった。それを達成する一環として、ネルガルにマルドック討伐を依頼したのだ。根本的に旅の目的が違う、というのがネルガルの認識だった。

このままアルと旅に出て、もしマルドックに出会ったら、いつものように先制攻撃ができるだろうか。アルの気持ちがブレーキになるのではないか。

情が絡むと命を失う、というのが賞金稼ぎネルガルの信念だった。

だから、賞金首の娘と旅をする気にはどうしてもなれないのだ。

 ネルガルは、賞金稼ぎとしてどんな手を使ってでも賞金首を討伐する、とあらためて決意した。

どんな手を使ってでも、と考えたとき、彼の心に妙案が浮かんだ。それは、ネルガルの記憶の底にある諸問題と、マルドック討伐を一気に解決に導くものだった。

 その作戦を思いついたのは、アルが鷹を介してマルドックと手紙をやり取りしている、という話を聞いたときの事である。

ネルガルは、アルに自分の知っている七惑星神の寺院に関する情報を漏らした。マルドックも七惑星神の名を持つ者なら興味があるに違いない、と付け加えて。

 そうしておけば、間違いなくアルはマルドックにその情報を伝達するだろう。そこが狙いだった。

 だが、この方法はアルを騙しているようで、良心が疼いた。

 だから、別れる前にアルと話がしたくなったのだ。

「アル、さっきの事だが、気が向かなければ忘れてくれてもいい。」

「さっきの事って?」

「七惑星の寺院の話だ。」

 アルは、ネルガルの正面に立ち、彼の両腕をそっと掴んだ。

 ネルガルは、逸らしていた目を下に向けた。アルの瞳は、ネルガルの胸の辺りでじっと彼の目を見つめていた。

「あたしは、あなたの望む通りにします。」

 ネルガルは、見透かされているな、と感じた。

 アルは続けた。

「あたしは、これから運命に向かいます。あなたも自分の信じる戦いを続けてください。」

「分かってる・・・。無理はするなよ。」

「あなたも、」両腕を掴む力が少し強くなった。「必ず生き延びてください。」

 

 ヌディンムトは巨木の下で二人の様子を見ていた。

「お、終わったようだの。」

 ネルガルとアルが近付いてきた。

「じゃあ、おれはここでおさらばするぜ。次に会うのは依頼を完遂したときだ。」

「ふむ。いずれまた会おう。」ヌディンムトが言った。

 シャマシュは、ペトス神の祝福を、と唱えた。

 ネルガルは立ち去った。

 ネルガルが視界から消えると、アルが振り向いた。目にはうっすらと光るものが見える。

「それでは、“空中庭園”にご案内します。」アルは気丈に振舞った。

「古来からの習わしで、エルフ族以外の者には目隠しをしてもらうのが掟なの。」

 

  

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