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はじめに

登場人物および地名

序章 イリアステームの杖

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第一章 少年戦士

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(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)
第二章 空中庭園

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(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

(16)(17)(18)      

第三章 邪悪なるもの

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(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

(16)                 

第四章 七惑星の巫女

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(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

(16)(17)(18)(19)

(20)(21)           

終章 記憶の底

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(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

おわりに

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小説「七惑星の記憶」

 

第一章 少年戦士

 

(5)

 

 アリア-サンは“賞金稼ぎの町”と呼ばれる。

 国家が存在せず、小規模な町が各地に点在していた時代、町の外に一歩踏み出すと、野盗や亜人、怪物などが人々の財、あるいは人々の肉体そのものを狙っていた。大規模な軍事組織による十分な治安が望めない中で、人々は自衛に力を注いでいた。

 “賞金稼ぎ”は、そんな時代が生んだ職業である。町の権力者や商人から“賞金首”の討伐を請け負い、達成後に報酬を受け取るというのが一般的な仕事のスタイルであった。冒険者と呼ばれる職業との違いは、仕事の内容が報酬の高い討伐だけに限られ、主な依頼人が権力者や豪商の点である。また、仕事を請け負うかどうかの判断は賞金の高さと賞金首と戦うリスクを天秤にかけるだけで、道徳観念が低いのも特徴であった。

 この職業は、古代王朝時代にすでに存在したと言われているが、王朝崩壊後に必要性が高まり、その人口が増えていった。

 時代を経るにつれ、賞金稼ぎ達は賞金首の種類によって専門性を高め、先鋭化していった。例えばウィルパーは、グールなどの不死の怪物退治を専門に請け負う“アンデッド・ハンター”と呼ばれる賞金稼ぎである。この事により、討伐の成功率は格段に高くなった。専門性が高くなると仕事の請負においては“評判”がより重視されるようになり、従来の活動範囲は所属する町や集落などの限定された地域が中心だったのが、腕の良い賞金稼ぎには遠方からの依頼も増え始めた。

 しかし、遠方からやって来る賞金稼ぎは、地元の同業者との軋轢を生んだ。力を職業とする人々はとにかく全てを力で解決しようとする傾向がある。そのため、一つの賞金首をめぐって賞金稼ぎ同士が殺し合ったり、一時的に仲間になっても最終的に裏切って賞金を独り占めにしたりという話は日常茶飯事となった。賞金稼ぎ達がグループを作り、何十年も抗争を続ける場合もあった。

 このような抗争の末に誕生したのが、“賞金稼ぎギルド”である。

 ギルドの役割は、仕事の請負、分配、争いの調停、裏切り者への懲罰など、多岐にわたる。所属する賞金稼ぎ達は実力によってランク付けされ、それに見合った仕事があてがわれた。ギルドは町の間でも連携しており、所属する賞金稼ぎにすぐにコンタクトを取れる体制を作っていた。これにより、ギルドの存在する町では賞金稼ぎにも一定の秩序が保たれ、組織的な活動が可能となっていた。ただ、ギルドの組織は抗争の末の勝者が支配していた為、問題解決を力に依存する体質はあまり変わっていなかった。また、賞金稼ぎの中でも突出した実力者はギルドに所属せず、昔ながらの手法で仕事を請け負う者もいた。

 かつて、アリア-サンは、賞金稼ぎギルドの隠れ里であった。アリア-サンにギルドの首領が居を構えた当時はまだギルドは統一されておらず、常に首領は命の危険にさらされていたのだ。しかし時を経て、ギルド組織が世に根付くと隠れ里としての意味は薄れ、一攫千金を夢見る若者が最初に訪れ、腕を試し、ギルドに所属できた暁には最初の仕事を請け負う町として世に知られ始めた。賞金稼ぎの仕事は高リスクだが高報酬である。また一般には高価な武器や薬剤も賞金稼ぎにとっては必需品であった。このことから、アリア-サンは商人たちが行き交い、職人が槌を鳴らす町として栄えている。

 ギルドの総本山は今もアリア-サンに存在し、ギルドがこの町を支配していた。ここでは賞金稼ぎが支配階級にあたるのだ。治安維持もギルドが行っており、ギルドに所属する賞金稼ぎ達が持ち回りで町の警備に当たっていた。また町で発生した事件、争議もギルドが指名した賞金稼ぎが調査、調停を行っていた。

 

 以上が、アリア-サンが“賞金稼ぎの町”と呼ばれる所以である。

 町の治安維持に対して支払われる報酬は小額であったことから、ギルドがこうした町の運営業務に指名するのは最も下位ランクの賞金稼ぎ達であった。そういった理由で、下位ランクの賞金稼ぎは“サーバント”と呼ばれていた。

 ラフムとラハムはウィルパーを危機から救い、町まで送り届けた功績を評価され、ギルドへの加入が認められた。

 二人は加入を認められた翌日の朝、サーバントの詰所に向かった。ギルドの心得を授かるためにエンリルという男を訪ねるようにと指示されていたからである。途中、この町で最も活気があるとされる商人街を通り抜ける必要があり、雑踏の中を歩くことになった。

 商人街では、各地からやってくる行商人が大小さまざまの天幕を張り、露店を出していた。商人と買い物客だけでなく、客寄せの踊り子や買い物客目当ての大道芸人までもがひしめき、賑わっていた。

 ラハムは歩きながら店を見て回り、先日の冒険で数を減らしてしまった聖水と解毒剤を補充しておいた。

 商人街の中心部、一等地と言える場所にはひときわ大きな天幕があるのが目を引いた。天幕は木の柵に囲まれ、一箇所しかない柵の出入り口には二人の衛兵が立っており、ここだけ物々しい空気が漂っていた。柵の周囲にはこの大商人のものと思われる露店が並んでおり、主に高価な武器や防具を扱っているようだった。商品からも推測できるが、露店の客はほとんどが賞金稼ぎと思われるなりをした人々だった。衛兵は出入り口の2人だけではなく、周囲の露店を見回る為の要員も数人いるようだった。

 ラハムは大天幕の前を通り過ぎるとき、少し衛兵に目をやった。

 衛兵の灰色の鎧には、ギルドメンバーの証である「黒トカゲ」の紋章は付いていなかった。ギルドが派遣した用心棒ではないようである。

 ラハムの視線に気づいた衛兵が彼を睨み返してきたので、ラハムは連れを探していたふりをして、前を歩くラフムを追っていった。

 商人街を抜けると急に周囲は静かになり、高い石造りの壁が見えてきた。壁の両側は山になっており、自然の地形を利用した城砦のようにも見える。壁には大きな鉄製の門があった。

 ラフムとラハムは、ここから先はギルドメンバーしか入れないエリアである事を知っていた。二人が歩いてきた商人街や、滞在している宿場街はこの防壁より後の時代に建設されたと聞いている。かつてはここから先がアリア-サンであり、この壁はギルドの首領を守る為の防壁だったのだ。

 二人は鉄製の門の前に進み出て、門の小さな窓口から昨日配布されたばかりの通行証を差し入れた。大きな門は開かず、脇にあった小さな扉が開いた。二人はそこから中に入り、警備兵から通行証を返却された。

 防壁の中は石作りの建物が整然と並ぶ静かな町だった。二人は警備兵からもっとも手前の小さな建物に行くように指示された。そこはギルドで最も下位にランクされる賞金稼ぎ、サーバントの詰め所であった。

 

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