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はじめに

登場人物および地名

序章 イリアステームの杖

(1)(2)

第一章 少年戦士

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)
第二章 空中庭園

(1)(2)(3)(4)(5)(6)
(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

(16)(17)(18)      

第三章 邪悪なるもの

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

(16)                 

第四章 七惑星の巫女

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)
(12)(13)(14)(15)

(16)(17)(18)(19)

(20)(21)           

終章 記憶の底

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

おわりに

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小説「七惑星の記憶」

 

第一章 少年戦士

 

(11)

 

 「それって、どういう事?」

ラハムは混乱していた。ラフムとは常に行動を共にしていたはずである。それなのにラフムだけが知っていて、自分の知らない事実があるという事が信じられなかったのだ。

「ごめん、ラハム。ヘリルの天幕で、ラハムがヘリルと会っている間、僕は控えの間に残ってたろ?あのときなんだ。」

「あ!」ラハムは思い出した。ヘリルとの面会を終え、控えの間に帰ってきたときラフムの顔は青ざめていた。思えば、あれから様子が変だったのだ。

 ラフムは話し始めた。その内容を再現すると、次のようになる。

 

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 ラフムがヘリルの天幕の控えの間でラハムを待っていたとき、衛兵が声をかけた。

「おい。おまえ、名は何という?」

ラフムはなぜ名前を訊かれるのか分からなかったが、隠すことも無いと判断した。

「ラフムといいます。」

「そうか。ラフム殿。ここで突っ立っているものつらいだろう。こっちで待つがいい。」

ラフムは衛兵の意外な言葉に戸惑ったが、自分がヘリルの客人である事からするとそう疑うことも無いと思った。衛兵は天井から垂れている幾つかの紐を引き、控えの間から隣の部屋に通じる幕を開けた。そこは殺風景な控えの間と違い、椅子とテーブルがあり装飾品も飾ってある応接間であった。そこでは、使用人と思われる女がポットからテーブルに置かれた2つのカップに紅茶を注いでいるところだった。

 ラフムは疑うことなくその椅子に腰掛けた。

「どうぞ。お茶は熱いうちに。」

女はそう言うと部屋から出て行った。

 部屋には注がれた飲み物の異国情緒の漂ういい香りが広がっている。ヘリルが接客用に使っているものだから、遠い国との貿易で得たものに違いない、とラフムは勝手に考えていた。

 ラフムが紅茶を少し口にすると、部屋の中が急に静かになった気がした。

 そういえば、部屋に衛兵の姿が無い。先ほど部屋に入ってきた幕は閉じられている。ラフムは若干の胸騒ぎを感じた。冒険者の本能が危険を感じ取ったのだ。

 そのとき不意に後ろから声がした。

「取引に応じる気にはなったかな。ラフムよ。」

そのしわがれ声は聞き覚えがあった。

「キシャル、何故ここに・・・。」

ラフムが振り返ると幕間から紫色のローブを来たキシャルが出てくるところだった。

「その若さでギルドに入会が許されるとは大したものじゃ。」

「それはあなたのおかげでもあるのですよ。」

「わしは何もしておらぬぞ。」

「あなたがラハムを助けてくれたおかげで二人で戦うことができました。だからギルドに入会できたのです。」

「まあ、よい。」椅子に座ろうとするキシャルの眼光が鋭くなった。

 ラフムは頭を巡らせていた。エンリルは、キシャルはヘリルと繋がっている事を疑っていた。その理由は、ヘリルの依頼した討伐に赴いたウィルパーがキシャルの罠にかけられ、危うく命を失うところだった事実だ。エンリルの疑いの証拠を掴むには、キシャルとヘリルがどれほどの関係かを把握する必要がある。

 ラフムがそんな事を考えているうちに、キシャルは話し始めた。

「ラフムよ。わしの事を警戒し、疑っておるのは分かっておる。それは致し方ないところだ。しかしな、世の中は広く、お前が知らない事も多い。それは分かっておるな?」

「はい。まだまだ未熟者ですから。」

「わしが嘘を言っているかどうか。それはお前自身が判断するのじゃ。わしの目を見ろ。」

妙に強制力のあるその言葉にラフムは自然に従っていた。キシャルの目は赤く濁っていたが、その奥には何か強い信念を感じた。

「わしはお前と同じく、親の顔を知らぬ。物心がついたときには孤児院にいた。ある寺院が運営していたその孤児院では、孤児達を集めて宣教師を育てていた。

 しかし、わしはその人生をよしとしなかった。なぜか、心の奥の記憶がそれを否定したのじゃ。わしはその記憶の正体が分かれば自分の出生も分かるのではないかと考え、自ら食っていける年齢になったときに孤児院を出たのじゃ。

 わしは魔法使いの修行をしながら、心の奥の記憶、つまりは出生の秘密を探る旅を続けておった。魔法使いの修行というのは、古代遺跡の調査に始まる。わしは長年、各地の遺跡を渡り歩いていた。

グリヌフスの地下で、太古の魔法使いの話をしたのを覚えておるか。かつてこの地には魔法使いを王とする王朝が存在し、何千年にも渡り繁栄していたのじゃ。その王朝では、“魔法使い”という言葉は職業や能力を指すものではなく、種族を指すものであったらしい。要するに、“魔法使い”に属する一部の民族がそれ以外の民族を支配しておったのじゃ。

 しかし、王朝は滅びた。そして、“魔法使い”の一族は忽然と姿を消した。なぜか?

 遺跡を調査していく中でわしはその謎を永きに渡り調べておった。遺跡の発掘から古代文字の解読まで様々な情報収集を行い、そこに含まれるもつれた糸を解きほぐし、その謎を辿っていった。そして、すべての疑問を解く鍵は、“奈落の門”にあることが分かったのじゃ。」

 ラフムは若干の眠気を感じていた。しかし、キシャルの話は情熱的であり、声は頭には響いている。何か頭の奥に直接語りかけられている感覚を味わっていた。

「初めて“奈落の門”に滅ぼされた町を調査したのは今から30年も前のことじゃ。そのとき、わしはある魔法戦士に出会った。彼は紫紺の甲冑に身を包んでおり、年齢はわしと同年代のようじゃった。

 彼は言った。『テームは王を復活させる装置だ。』と。わしは一瞬で理解した。テームとは“奈落の門”を意味し、王とは古代王朝の魔法使いの長である事を。そして彼はわしより何倍も“門”の事を調べ上げており、すでに何名かの同志がいることも分かった。

 そして何よりわしの心に響いたのは次の言葉じゃ。

『我々は古代民族復活の為に生まれた、一族の尖兵である。キシャルよ、私はお前の名を知っている。お前は古代の地神の名を持つ同族である。』

その言葉は、幼少期より疑問を感じていた我々の存在意義と、“奈落の門”を調査した中での疑問を見事に解決したのじゃ。

わしは彼に共感し、それからずっと仕えておる。彼の名はマルドックという。」

 ラフムの目は虚ろになっていた。キシャルは続ける。

「そしてここからが重要じゃ。ラフムよ、お前と弟のラハムは10年前、“門”がグリヌフスを襲ったときに生まれた最も新しい“同族”なのじゃ。」

 

 

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