Salvador'sCabintrival_dragon_red.gif

 

はじめに

登場人物および地名

序章 イリアステームの杖

(1)(2)

第一章 少年戦士

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)
第二章 空中庭園

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

(16)(17)(18)      

第三章 邪悪なるもの

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

(16)                 

第四章 七惑星の巫女

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)
(12)(13)(14)(15)

(16)(17)(18)(19)

(20)(21)          

終章 記憶の底

(1)(2)(3)(4)(5)(6)

(7)(8)(9)(10)(11)

(12)(13)(14)(15)

おわりに

→Home    →小説    →作者について    →写真館    →リンク

小説「七惑星の記憶」

 

第一章 少年戦士

 

(10)

 

 「エンリルがわしの洞穴に来た1ヶ月前に、洞穴にほど近いキルスという町が“奈落の門”により崩壊していたのじゃ。そのとき気がついたのじゃが、ヌディンムト、シャマシュ、マルドックの3人が洞穴にやってきた時期にも、似たような事件があったのじゃ。あの年、名も忘れてしまったが、ある都市国家が“門”に襲われ、たまたまそのとき町を離れていた住民達が難民となってキルスに身を寄せておった事を思い出したのじゃ。

 わしには、“門”の出現した年だけに幼子が洞穴にやってくるという事実が、偶然とは思えなかったのじゃ。もしやと思い、わしが生まれたと想定される年付近を行商人や旅人に尋ねて回ったところ、その時期にも、とある交易都市が“門”に滅ぼされていたという事実がやはりあったのじゃ。」

「“奈落の門”については、キシャルも話していたようです。」ラハムが言った。「確か、グリヌフスが滅びた原因もそれだとか・・・。」

「そう、10年前の話じゃ。」ネポは続けた。「わしはグリヌフスが“門”に滅ぼされたという話を聞き、アリア-サンに移り住んだのじゃ。」

「それは俺も初耳だな。仕事の為だと思っていたが。」エンリルが言った。

「ああ、お前と共にここに移住したとき、お前はまだ18だったか。いずれは話すときが来ると思っておったが、それが今日来たということじゃ。お前はこの町に来て、サーバントという天職を見つけ、水を得た魚のように働き始めた。すぐにこの小屋も出て行ったのう。」

「しかし、俺たちの移住とグリヌフスが滅びた事と何の関係があるんだ?」

「わしは、次はアリア-サンだと思っておるのじゃ。」

「な、何が、ですか?」ラハムが口を挟んだ。

「・・“奈落の門”が襲う町じゃ。」

「何を根拠にそんなことを・・・」エンリルは口元に笑みを浮かべたが、目は笑っていなかった。

「もともとは直感じゃったが、今は確信しておる。これまで、数十年の間隔で現れる“門”についてあまり研究はされておらんかった。じゃが、どうも“門”の出現は町の人口と関係しておるようなのじゃ。」

「人の数、ですか。」ラハムの記憶に何かが引っかかった。

「そうじゃ。わしの記憶にあるキルスの町も今のアリア-サンのように、商売が盛んで栄えておった。そして人口は常に増加しておったのじゃ。」

「確かに、この町はこの1年で随分人が増えた気がするな。」エンリルが言った。

「グリヌフスによく出入りしていた者に聞いたのじゃが、グリヌフスでも滅びる寸前は同じような状況だったようじゃ。そして、町の治安維持を効率よくする為、グリヌフスの執政官は魔法使いを雇い入れ、魔法結界で町の周りを囲ったのじゃ。」

「結界・・・」ラハムは何かが繋がったような気がした。「私は、ヘリルの天幕でグリヌフスで見たものと同じ農地面積と食料消費量の書かれた書類を見ました。そして、鷹の持っていた手紙にある『結界の件』・・・。」

「そうじゃ。農地面積と食糧消費量が分かれば、町の人口が推測できる。キシャルがグリヌフスの地下で調査していたのは、アリア-サンとグリヌフスの人口の比較をしていたのじゃ。そして、キシャルはヘリルと組んでギルドに近づき、町に魔法結界を張ろうとしている。即ち、一味は“奈落の門”をアリア-サンに人為的に発生させようとしておるのじゃ。そしてその黒幕は、マルドックじゃ。」

「ちょ、ちょっと待ってくれ師匠、」エンリルが身を乗り出して言った。「それは何の証拠もない与太話だぜ。まず、“奈落の門”をこの町に出現させてどうするというんだ。それからキシャルとヘリルがつるんでいる証拠はまだ何も無いんだぜ。」

「“奈落の門”が我々の出生と関係しておるという事実は、おそらくマルドックも知っておろう。何かわしの知らない事実も掴んでおるかも知れぬ。とにかく、神出鬼没の“門”を人為的に町に発生させ、我々の出生の秘密を暴こうとしているに違いない。」

「でもそんな事したら、町の人たちはどうなっちゃうの?」フーレイが尋ねた。

「“門”の後に残るのは廃墟だけだと昔から決まっておる。その状況から、“門”は強烈な重力場のようなものであるらしい。人間のようなやわな存在は、その重力に押しつぶされてしまうのじゃろう。要するに、死はまぬがれん。」

「そんな犠牲を払ってまで、“門”を呼ぼうなんて、いったいマルドックってのはどんな人間なんだ?」エンリルが言った。

「犠牲じゃと?」ネポは吐き捨てるように言った。「これまでくだらない戦争や為政者の失敗でどれだけの人々が犠牲になったと思う?わしはずっとそのような犠牲を洞穴から見ておった。マルドックや皆も、なぜ人間はこのような生と死を繰り返すのか。そして、なぜ自分達はここにいるのかという疑問を持っておった。“奈落の門”への備えとて、本来は為政者の仕事のはずじゃが、10年に一度来るかどうかも分からない災害の備えを行う者は未だにおらぬ。せいぜい、神への祈りのひとつに追加するぐらいじゃ。それにな、」

ネポは言葉を詰まらせた。

「それに、何だよ?」エンリルが問い詰めるように言った。

「・・マルドックのやろうとしていることは、“門”の出現を促進しているに過ぎん。今のアリア-サンの状況を見ていると、いずれにしても近い将来、“門”はやって来るじゃろう。

 わしも奴のやり方に賛成しているわけではない。はっきり言えば反対じゃ。しかしな、来るものは来るのじゃよ。」

 

 ネポの話が終わると、しばらくの間部屋は静まり返っていた。

 しばらくして、エンリルが口を開いた。

「話が大きくなりすぎて、収拾つかねえな。俺は、町を守るサーバントとしてコツコツやることにする。まずは、キシャルとヘリルがつるんでいる証拠を調べるぜ。」

「証拠を掴んでどうするつもりじゃ。」

「ギルドに訴え、ヘリルを追放するんだ。それしかねえ。」

「ヘリルはギルド上層部と癒着しておるのは知っておろう。無理じゃ。」

「しかし、それしかこの問題を避ける方法は無いじゃないか!」

「そもそも、そんな時間はないぞ、エンリル。時は来ているのじゃ。」

「師匠、じゃああんたはこの町に来て、何をするつもりだったんだ?」

「わしは過去の落とし前をつける為にここに来たのじゃ。それ以上は言えぬ。エンリルよ、わしにはわしの考えがあるのじゃ。」

「しかし・・・。」エンリルは困惑した様子だった。

「あの、実は・・・」それまで、うつむいて沈黙を続けていたラフムが口を開いた。

「何だい?ラフム。」ラハムがいつもと様子の違うラフムを気遣った。

「キシャルは、すでにアリア-サンにいます・・・ヘリルの天幕に。」

「えっ!」フーレイが叫んだ。

「キシャルとヘリルが仲間であることは、私が証明できます。」

ラフムは顔を上げた。

 

 →NEXT